鮫日記

男もすなる日記といふものを、スピッツオタクもしてみむとてするなり。

2日目:よろしくねスピッツ―『楓』

 こんにちは、またお会い出来て嬉しいです。

 初めましての方もこんにちは。初めまして、さめをと申します。

 この『鮫日記』は、日本のロックバンドの「スピッツ」が好きなだけのどこにでもいる普通の女子高生の私が、徒然なるままに時々絵も挟みながら駄文を自分のペースで連ねていく…といった趣旨のブログです。「日記」と名乗っているのですが、毎日投稿を目指しているものではなく、書きたいときに書いて、自分のペースで投稿しています。

 前回のを読んで頂いた方には分かると思うんですが、当方、日本語オタクなので…歌詞の考察・解釈をするブログではありません。日本語や日本文学を個人的に研究してる身として、「ここがすごいんだよ!」「ここの表現が好き!」といったものをひたすらに書き綴る…といったものです。

 

 他人の自己語り、妄想、考察、、、あたりが苦手な方はここでブラウザバックをオススメします。

 

 

 前回語らせて頂いたのは、小学校で出会った――空も飛べるはず

 そして、今回は、あの『空も飛べるはず』でガーンとなった後に家に帰ってから、他にどんな曲があるんだろうと思って聴いて、「あ〜…これは沼だな」と確信した曲―――『楓』

 今も変わらず大好きな曲です。

 そんな、『楓』は、1998年3月25日リリースの8thアルバム『フェイクファー』、1998年7月7日リリースの19thシングル『楓/スピカ』、1999年3月25日リリースのスペシャルアルバム『花鳥風月』、これらの円盤で聴くことができます。あと、YouTubeでも聴けます、便利な世の中になりましたね〜↓

https://https://youtu.be/YapsFDcGe_s

 他にも、2022年に放送されたドラマ、『silent』の挿入歌に起用されるなど、…え……されてたんですか!?…ウワ…し、知らなかった…………悔し……ちゃんと見とけば良かっ…た(今更) ま、まぁ…そのね、現在も多くの人に愛されていますよ、って事です。……お恥ずかしながら、私は『silent』を見てなかった訳なんですけども。妹が見ていたのを時々横目にチラッと………程度で…『魔法のコトバ』が流れるシーンは見たんですけどね、たまたま笑 それだけだと思っていたら、まさか『楓』まであっただなんて!!?教えてくれよ〜妹〜〜!!(※妹はスピッツをよく知らないのでそもそも…笑)

 プリンの手話は妹がすごい言ってたので分かります!一時期、おそらく『silent』で出てたやつなのかな?色々手話クイズを妹に出題されてて困惑してました…笑 「うるさい」はよく出題されてました、クイズというか…特に会話で。べらべら私が語ってると毎回しつこいくらいやってくるんですよねぇ…聞いてきといて何なんだ、ちょっと腹立つな、と思いながら笑

(※今さっき急遽裏紙に描いたもの)

 

 "間接的な"日本語オタクの私が好きな修辞法(レトリック)は、暗喩撞着語法擬人法の三点セットです。めちゃくちゃな持論ですが、この3つは日本語が一番輝く瞬間だと思っています。日本語の良さを最大限に活かせる修辞法です。…と言う話は前回もしましたが、他に挙げるとですね…反復法も好きですね。

遠く遠く あの光まで 届いてほしい

明日 君がいなきゃ困る困る

(『スターゲイザー』)

この「遠く遠く」と「困る困る」なんかが反復法になります…結構草野さん使っていますよね。あと、緩叙法列叙法も好きですね〜、回りくどいの大好きです!笑

 

 撞着語法大好き人間として外せないのは、もうここですよね。そう、

瞬きするほど長い季節が来て

ここです、ここ…オタク、ここ好き……大好き…永遠と一瞬の儚さを結びつけたものほど素晴らしいもんはねぇんだよ(泣)

 『楓』で一番描かれてるのは「時間」だと思うんです、私はね。「時間の流れ」だったり、「時間の幅」だったり…そのね、「時の流れ」を1番描きやすい(と私が勝手に思っている)のは、列叙法です。「雨は地面に染み込み、川を流れ、海へ行く」みたいな、順番順番に表記していくものです。光景も同時に浮かびますし、良いですよね…ただ、実はこれ『楓』の歌詞にはありません!これの別に弱点ではないんですけど(むしろ強み)、特徴の一つとして、一つ一つ辿っていくんですよ。双六のコマを一つ一つ進めるようにね。だから、細かく手順を踏んでるイメージなんですよね。「流れ」は掴めても、その細かさ故に「幅」はちょっと掴みにくいんですよね。『楓』はさよならの、別れの曲ですし、「君」と過ごした"昔"を思い浮かべて喪失感みたいなものに浸ってるような感じ………"今"と"昔"の間にある「距離感」が大切だと思うんです。そう、だから、「流れ」ももちろん大切なんですけど、それ以上に「幅」が大切なんです。

 

 『楓』って、楽譜適当に検索してもらってメロディーライン見て頂くと分かると思うんですけども、平坦な長い大きなまとまりというか、大きな流れになっているんですよね。もちろん盛り上がるところはちゃんと高くなっていくんですけども、変動が少ないというか、パイプオルガンで弾くような…フレーズ一つ一つも長いし、音自体も長い音が多いんですよね。音の長さは、直接的に聴き手の「時間の長さ」に影響を及ぼします。

かわるがわるのぞいた穴

呼び合う名前がこだまし始める

特徴的に挙げられるのはここらへんですかね…。「かわるがわる」「こだまし始める」、これらの言葉が与える印象に、「時間の幅」があるんですよ。

 なぜなら、「かわるがわる」つまり、「変化」には必ず時間を要します。ただの一回の変化ではなく、短編的な変化が沢山ある、コロコロと変わっているイメージ。素早い動き、この、覗いてる主体は同じ場所をじーっと見つめている訳ではないので、そこに物理的な距離があります。そして「こだま」、まあ、分かりきってるとは思いますが、「こだま」って「やまびこ」です。やまびこが起こるには距離が必要です。これらの物理的な距離が歌詞となった結果、「時間の距離」になっているんだと思います。

 あと、歌ってみれば分かるんですけど、ここ結構伸ばしますよね。…しかも音程あまり変わらない。「か〜わる〜が〜わる〜のぞ〜いた〜穴から〜♪」って。「よび〜あう〜なま〜えが〜こだ〜まし〜はじ〜める〜♪」って。長さが直接「幅」を表せられるんですよね。これは文字だけの詩では出来ない表現ですよね、歌だから、音楽だから出来る特別な表現だと思います。

 

 ここでちょっぴり、「楓」という植物にも注目してみます。題名をつけるって事は、何か意味があって、基本的にすごく考えて付けられてると思うんです。

 「楓」の花言葉ご存知ですか?私は、調べてみて初めて知ったのですが、

・調和

・美しい変化

・大切な思い出

・遠慮

…など、らしいです。なるほど、それっぽい…って感じしませんか笑

季節の変化によって美しく移りゆく楓の葉、紅葉狩りという言葉があるように古来から日本人に親しまれていた植物ですよね。漢字でも、風がつくように、楓の種は風任せ、自然任せですよね、なりゆきで生きているような…竹とんぼのようにくるくる回って可愛らしげに落ちていきます。

 

 あとですね、ここですね。印象的ですよね。

さよなら 君の声を抱いて歩いていく

ああ 僕のままでどこまで届くだろう

 ここ、良いですよね。"声を抱く"っていう表現…本来「声」というものは「抱く」ことは出来ないもの。つまり、何かの比喩、暗喩であるはずです。私は「記憶する」、「覚えていること」だと思います。

 「声」っていうか、「音」って一番最初に消えてしまう記憶らしいですよ。五感の中で一番最初に消えてしまうのは、「聴覚」なんですって。そう思うと、いつまでも記憶に残る「音楽」を作れる方々ってすごいんですね。あ……確かに言われてみれば私、4年前に亡くなったおじいちゃんの声、もう忘れてしまっています。顔とかは全然覚えているんですよ、ちゃんとありありと思い出せます。でも、もう声は思い出せないです。なんだか寂しいですね。忘れたくて忘れた訳じゃない、むしろ忘れたくなんてないのに。…つまりね、「音」が記憶から消えてないって事はその人の事、きっと全部まだ覚えているって事なんだと思います。「君」のことを、全部全部ずっとずっと覚えていようって決意なのかなぁ…なんて思ったわけです。

 「抱いて歩いていく」って表現なんですけど、この「僕」は「君の声」を「背負ってる」訳じゃないんです。「背負う」って言うのは、「負」から、負担とか、言葉として"マイナス"のイメージを受け取ります。でもね、重すぎたら、忘れようと思えば、手を離そうと思えば、離せるんです、「抱く」って言うのは。重すぎたら自身が潰れてしまう「背負う」とは違うんですよね。一種の義務のような強制的な「背負う」とは違って、自らその運命を選択している訳なんですよ、「抱く」って言うのは。

 そして歌詞の本当に一番最後は

ああ 君の声を

、となっていて、最後のフレーズのみ動詞がありません。結局、この「僕」は君の声をどうするんでしょうか。このまま、繰り返している通りに「抱いていく」んでしょうか、それとも「離して」しまうんでしょうか……きっとここは、草野さんが聴き手の解釈に任せたんでしょうね。

 

 

 今回はこのあたりでいかがでしょうか。私の、こんなただのスピッツ兼日本語のオタク語りで、何か新しい発見なり楽しさなりを見つけて頂けたなら本望です。今回も楽しく草野さんが紡ぐ言葉たちの「ここが大好きポイント」をだらだら綴ったわけですけども…笑

 ついでに日本語の魅力にも気付いて頂けたら最高に嬉しいです!

 

 次回の曲はまだ特に決めていません。何にしようかなぁ…なんて。

 

 「この曲、日本語オタク的にどう思っているのか知りたい!」みたいなリクエストや簡単な感想でも長文の感想でも…あればコメントして頂くかお題箱にでもぶっこんで頂ければ嬉しいです。お題箱の場合は、イラストのお題との区別のために最後に「(鮫日記)」と付けるとか何でも良いんで分かるようにして頂ければ!

【お題箱】 http://odaibako.net/u/same_____29

 

 今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

 

 

 それではまたどこかで巡り会えたら。  さめを