鮫日記

男もすなる日記といふものを、スピッツオタクもしてみむとてするなり。

8日目:『アケホノ』/スピッツ

 こんにちは、またお会い出来て嬉しいです。

 初めましての方もこんにちは。初めまして、さめをと申します。

 この『鮫日記』は、日本のロックバンドの「スピッツ」が好きなだけの普通の女子高生の私が、徒然なるままに時々絵も挟みながら駄文を自分のペースで連ねていく…といった趣旨のブログです。「日記」と名乗っているのですが、毎日投稿を目指しているものではなく、書きたいときに書いて、自分のペースで投稿しています。

 周りの人より少しだけ日本語が好きな、スピッツオタクが綴っているだけなので、歌詞の考察・解釈を中心にするブログではありません。日本語や日本文学を研究してる身(日本文学・文化の比較研究を行うゼミに所属しています)として、「ここがすごいんだよ!」「ここの表現が好き!」といったものをひたすらに書き綴る…といったものです。書き綴っていく過程で結局考察・解釈が出てしまうところは全然あるとは思いますが、その目的ではないので考察・解釈が読みたい方は別のブログへ飛ばれることをオススメします!

 また、他人の自己語り、妄想、考察、、、あたりが苦手な方はここでブラウザバックすることをオススメします。

 

 リクエスト頂きました、アケホノ

https://open.spotify.com/track/2Ne0eaIxieouVpchivIH3x?si=Znylcyj8RnKOZEk10dML_w

 大好きな曲です。(全部)

46作目のシングル『美しい鰭』のカップリング曲となっております𓇼𓆡𓆉𓇼𓆡𓆉

 個人的にはアケホノの方が好き…かも❓いや、魚影には鰭が何よりもピッタリですけどね⁉️こう、曲単体で…言葉にするの難しいな、うん、今の気分はアケホノです。

 

 まずタイトルから、「アケホノ」…おそらくこれはほぼ100%「曙(あけぼの)」の語源となった「明仄(あけほの)」でしょうね。要するに夜明けです。

 曙色もありますよね、カラーコードは#f19072です。橙とピンクの間のような淡くて可愛い色。ウィキペディアによると伝統色ではなく、明治時代に欧米から持ち込まれ、流行色となった色だそうですよ。美しい鰭のジャケットの水色と良い感じに補色関係っぽくて良いですね、補色大好き。

 色の話は置いといて、夜明けと解釈して良さそうですよね。

 それでは、歌詞に入っていこうと思います!

つながっていた 多分僕らはいつも

それぞれ闇の奥にいた時でさえ

そのぬくもりを あえて例えるならば

救いのない映画の後の甘い物

 初っ端草野節すぎる🤦🏻‍♀️愛です。

 特にと私があげるのならば、"そのぬくもりを あえて例えるならば 救いのない映画の後の甘い物"ですかね。救いのない映画、バッドエンドですかね、主人公も主人公が愛した人も結局死んじゃった。誰も幸せになりませんでした、おーわり。チャンチャン。その後、別に自分に不幸があったわけじゃないけど、そんな自分には明日がある訳で、たかが映画如きで沈んでいる場合では無い。そのドヨンとした沈んだ気持ちの中で慰め程度に頂く、特に高級な訳でもない安っぽい平凡なスイーツ。その僕らのぬくもりはそんなスイーツのようだと…いうことでしょうか?お互いに闇の"奥"はきっとこの"沈んだ"気持ち、誰も幸せにならなかった映画を見終わったような気持ち。闇って真っ暗で奥行も何もないけど、そこに"奥"って言葉を持ってくるだけで広がりが生まれる。

 お互いに別々の不幸の真っ只中でも繋がっているんです。それはきっと心の繋がり。最近はと言うか、醒めない辺り…いや、もう少し前だな、とげまる、さざなみCDあたりからすごくそれを感じるんですけど、初期スピッツならではの身体的な、物理的な繋がりから心、精神的な繋がりがよく歌われるようになりましたよね。聞いててすごく温かい優しい気持ちになれる。一瞬の切り取りではなく、長い目線に立ってという感じ。身体的な距離から精神的な距離に変わったことと時間の幅が広がったこと、きっとそれは今のスピッツだから書ける詞。優しさで溢れてて、自分は一人かもしれなくてもそれを否定しないでそっと遠くから見守ってくれているような存在になっている。だから私は今もこれからもず〜っと大好きなはずなんですよね、スピッツが。悲しいときも一緒にいてくれて、楽しいときも一緒にいてくれる。それがきっと"それぞれ闇の奥にいたときでさえ"の"さえ"になっているのだと思います。楽しい、幸せな時はもちろん、辛いときでさえも繋がっているよってことじゃないかなって思いました。

 

影はグレーから徐々に白くなり

二人の頬も染まる頃

 

アケホノに誓いましょう 昔じゃありえないあの

失ったふりしてた愛の言葉

諦めるちょい前なら 連れて行くよ怖いかな

もう大丈夫泣いちゃうね ほわんと淡い光

 "影はグレーから徐々に白くなり"は、タイトルの通り「明け方」で、そして、"影"なので目線は下にあります。本来、光が強い方が影は黒く濃くなるんですけど、ここはおそらく印象重視で描いたんでしょうね。

 その目線が下にある状態から、"二人の頬も染まる頃"と入れることで目線が大きく上に動きます。この頭に思い浮かべられる世界での目線の移動が大きいほど言葉が作る世界に広がりが出ます。この広がりこそが曲自体がごちゃつかず、海のような空のようなそういう包容力を持たせているのだと思います。そして色の変化もそうです。黒→白から視線の移動を経てカラー(暖色)。

 そしてサビです。明け方の逃避行のような光景が私は思い浮かびましたが皆様はどうだったのでしょうか、ここは聞き手が自由に想像するポイントの一つなのであまり深くは探りを入れません。考察ブログではないので(笑)

 個人的には「ちょい前」とかとか「泣いちゃうね」とか「ほわん」とかの可愛い感じのワードが散りばめられてて好きです。…うん、言葉の使い方はすごく、すごく可愛いんだけどさ、「諦めるちょい前なら連れて行くよ怖いかな」「もう大丈夫泣いちゃうね」って…無理やり連れ去ろうとしてるの!?ってなっちゃって(笑)。可愛い口調で何怖いこと言ってるんだ!って(笑)。この、分かります?こういうところありますよね、草野マサムネ。まぁ、私はそこがたまらなく大好きなんですけども…。ここのサビはすごくサディスティック

 

否定の中に なんとか理由を拾って

高級な笑顔の渦に飲まれてみたり

嫌いな自分を 無理やり正当化しようと

もがいて穴の外へ逃れてからは

 1番のAメロと違ってあくまで「自分」です。そして「否定」「嫌い」「無理やり」「正当化」とネガティブワードの連発は、その中に差し込まれる「高級な笑顔」をより浮き立たせる結果となっています。

 

ザラザラで冷たい地面を這ってきた

汚れた腕を讃えあって

 

アケホノに誓いましょう この気持ちはもうなんなの?

上書きされる初恋の定義

ナマケモノのまんまで 走れるかもね頑張れ

メモして残したい 懐かしい痛み

 これ、分かります?あの、1番の歌詞と比べて見て欲しいんですけど…私、これ発見したとき、「まじで草野マサムネっ!!!!!(クソデカボイス)」。「影はグレーから徐々に白くなり 二人の頬も染まる頃」の最終的な色は朝焼けの色なのでオレンジだとか暖色です。そして「ザラザラで冷たい地面を這ってきた 汚れた腕を讃えあって」は、「冷たい」なので寒色です。色の対比か〜なるほどね、ウマ!天才!と思ったそこのあなた!!まだ早いです。関心するのは。次の、「アケホノに誓いましょう 昔じゃありえないあの 失ったふりしてた愛の言葉 諦めるちょい前なら 連れて行くよ怖いかな もう大丈夫泣いちゃうね ほわんと淡い光」は、先程サディスティックだと言いました。可愛い口調なくせして無理やり連れて行く、相手が怖くて泣いちゃうならそれは大丈夫なはずはない。そして「アケホノに誓いましょう この気持ちはもうなんなの? 上書きされる初恋の定義 ナマケモノのまんまで 走れるかもね頑張れ メモして残したい 懐かしい痛み」なんですよ。いや、めちゃマゾじゃね?って。痛みをメモして残したいって何?ね。最後がね、特にとってもマゾヒスティック。SとMという性向の対比。対比の連発…分かる?やばくね、もう大好きなんです、こういうの。対句みたいな、、みたいじゃない、普通に対句だわ。色の対比だけでときめきポイント激高なのに、こんな。こんな…性向まで…。そんな…。ありがとうございます(泣)。草野マサムネの詞、一生推す。

 

生きていて良かったそんな夜を 探していくつもの

夜更かしして やっと会えた朝

 

アケホノに誓いましょう 昔じゃありえないあの

失ったふりしてたクッサイ言葉

諦めるちょい前なら 連れて行くよ怖いかな

もう大丈夫泣いちゃうね ほわんと淡い光

 「生きていて良かったそんな夜を 探していくつもの 夜更かししてやっと出会えた朝」って表現が好きすぎて…。擬人法良いよなぁ良いよなぁ。夜は希死観念に襲われていたのかしら。必死に生きる意味を探していたんだね、きっとそれが"君"だった。

 既知の方が多いとは思いますが一応記述しておきます。「クッサイ」、「クサい」とは「いかにも演じているようなわざとらしい様子、気取った様子」を表す言葉です。うんうん、「愛の言葉」は気取って言ったんだネ…気取って言っちゃったなら思春期なのかなぁとか、それをちょっと恥ずかしいと思っててなかったことにしたかったのかな、痛いほど分かるな…。ちょっぴりカッコつけちゃった言葉とかって言われた相手はそんな覚えてもないんだけど、自分の中で若干黒歴史化するんだよね…そういう言葉すらも今は誓えるよってことなのかなぁ。そう思うと最後の締めの一連は自己中心的なサディスティックさはちょっと薄まる。怖くても一緒だよ、みたいなのに変わったような気がする。マゾを一回挟んでるからかも。この印象の変化もすごいな…と思います。

 

 

 今回はこのあたりでいかがでしょうか。私の、こんなただのオタク語りで、何か新しい発見なり楽しさなりを見つけて頂けたなら本望です。今回も楽しく草野さんが紡ぐ言葉たちの「ここが大好きポイント」をだらだら綴ったわけですが、ついでに日本語の魅力にも気付いて頂けたら最高に嬉しいです!

 

 「この曲、日本語オタク的にどう思っているのか知りたい!」みたいなリクエストや簡単な感想でも長文の感想でも…あればコメントして頂ければとっても嬉しいです。

【お題箱】(閉鎖している期間もあります) http://odaibako.net/u/same_____29

 

 今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!