鮫日記

男もすなる日記といふものを、スピッツオタクもしてみむとてするなり。

3日目:わたしとスピッツ―『オバケのロックバンド』

 こんにちは、またお会い出来て嬉しいです。

 初めましての方もこんにちは。初めまして、さめをと申します。

 この『鮫日記』は、日本のロックバンドの「スピッツ」が好きなだけの普通の女子高生の私が、徒然なるままに時々絵も挟みながら駄文を自分のペースで連ねていく…といった趣旨のブログです。「日記」と名乗っているのですが、毎日投稿を目指しているものではなく、書きたいときに書いて、自分のペースで投稿しています。

 周りの人より少しだけ日本語が好きな、スピッツオタクが綴っているだけです。歌詞の考察・解釈を中心にするブログではありません。日本語や日本文学を研究してる身(一応、高校では日本文学・文化の比較研究を行うゼミに所属しています。…論文やらパワポやら発表準備に追われる背徳感の中で書いているわけですが笑)として、「ここがすごいんだよ!」「ここの表現が好き!」といったものをひたすらに書き綴る…といったものです。

 

 他人の自己語り、妄想、考察、、、あたりが苦手な方はここでブラウザバックすることをオススメします。

 

 

 前々回(初回)は、私とスピッツの出会いの曲――空も飛べるはず

 前回は、私がスピッツ沼を確信した曲――『楓』

 じゃあ、今回どうしようって思ったんですよね。無いわけじゃなくて、語りたい曲はもう本当に沢山ありすぎて選べない状況で…『楓』の次に聴いた曲とかメモしてれば良かったんですけど、そんなことしてるハズもなく。それでですね、この前Twitterでいつものように呟いた独り言がなぜか意外と反応を頂いたのでみんな見たいのかなっていう…まぁ勘違いでも良いや!という感じで…笑

 題名から分かりますが今回は、『ひみつスタジオ』から――『オバケのロックバンド』

 

 このFA、結構自分の中で気に入っています。色的にも、メンバーの表情的にも。華やかで可愛い感じになって良かったなぁと。

 マイクが自分のところに来たときにちょっぴり照れちゃう田村くんが最高に愛おしいなと…MV見る度にわ゛〜〜〜〜っと床でゴロゴロするレベルでその愛おしさに悶絶しているんですけども。そろそろいい加減に体も慣れてくれ、…慣れる訳なかろう!

 ニコニコに歌う﨑ちゃんも最高におキャワで…!蝶々のワッペンが付いてるお洋服良いですね、これ…すごく可愛い。いつまでもニコニコしていて欲しい。本当に﨑ちゃんがマ〜ジで癒やしです。何じゃこの可愛い生き物は〜〜〜〜……オタクが愛でますナデナデ

 草野マサムネの走り…いや、みんな走ってるの好きなんですけどね、特にです!特にマサムネの最後のあのダッシュが個人的にすごく大好きです笑。皆んなで歌えて楽しいねぇ良かったねぇと、スピメンの3分の1の年齢の癖してまるで孫のお遊戯会を眺める気分で観てるわけですが……意味が分からないのは私も同じなのでツッコまないで下さい。オタクあるあるだと思うんですけど、ふと我に返った時が一番困惑しますよね。自分の父親より10も上の、50代の男性になんで、どうして、「可愛い」なんて感情抱いてるんだろう………だって可愛いから仕方なくない?(自己完結)

 楽しそうに歌うテッちゃんのお声はちゃめちゃに好きですね〜〜カワイイ…地声から何となく想像はついていたっちゃついていたんですけども。このね、、見た目とのギャップね、最高ですね。もはや、イケてる仙人になりつつあるテッちゃんですが、声はとてもカワイイ。言動もカワイイ。オタクはギャップに弱いって、もう、何度言えば分かるの!!?(ありがとうございます)

 色々新鮮すぎる曲で最高ですヨネ…(泣)

 そんな、『オバケのロックバンド』は2023年5月17日に発売されました、17thアルバム『ひみつスタジオ』に収録されています。柔らかな黄色が印象的〜〜〜かわちぃ〜

 

 この曲は、「"君"と"僕"」ではなく、「"わたし"と"スピッツ"」って感じがするんですよね。二次元オタク用語で言うと、スピッチとスピッツの「イメソン」的な……最高ですね。あぁこれは、自分のために作られた、歌われた、演奏された曲なんだなぁと…勝手に信じてます笑

 

 MV語りで大分長引きましたが、それでは早速、日本語オタク的に草野正宗の詞の大好きポイントを今回も綴っていきます!

 

 なんたって私が一番大好きなところは、

少しでも微笑み こぼれたら

そのしずくで俺生きていける

、そう、ここです。何度でも言うが、私は草野正宗の連想ゲームが大好きなんです。

 「微笑みがこぼれたら」…「笑みがこぼれる」というのは普通にある慣用句です。「笑みがあふれる」もありますね。「こぼれる」も「あふれる」も「溢れる」という漢字ですが…歌詞は「あふれる」じゃなくて「こぼれる」。「あふれる」と言うと、お風呂に浸かった時に勢いよくザバーっとなるような、"多量"の液体が押し出される印象があります。それに対して、「こぼれる」と言うと、コップの縁ギリギリまで注いでしまったジュースを幼子が運んでいたらピチャピチャと床に…ヘンゼルとグレーテルのように、歩いた場所に点々と落ちていくなるような…まぁ、そんな、押し出されると言うよりは不意打ちに"少量"がはみ出たといった印象があります。「こぼれる」を使う時は器が固定されてないイメージがありますね…。「微笑み」もただの「笑み」に比べたら笑いの範囲は小さいですよね、そして少量の液体の落下である「こぼれる」。極限まで小さい表現をしているわけです。例えば、ピペットで少し、一滴。それだけでも「俺」は生きていけるわけです。

 「水」って人間が、生き物が生きる上で絶対に欠かせません。成人で、食べ物で接種する水分は除いて、2Lは必要らしいですよ。ピペットで一滴とは比にならないですよね。そんな、決して少なくない量が毎日必要なわけですけども、「君の微笑み」という水は一滴でもあれば生きていけるんだ、という誇張法が見られるというわけです…本当に微笑みだけで生きていけるわけないですから、水だって食べ物だって酸素だっていりますから(そりゃそう)…この「君」に対する気持ちの大きさが感じ取れます。

 「こぼれる」の漢字表記「溢れる」は、氵(さんずい)がついているので、言わずもがな"水"に関係している言葉です。この、「こぼれる」=水=「しずく」、という連想ゲームです。「こぼれる」は液体の"落下"という動作を表し、「しずく」は"落下"する液体という主体を表します。この繋がりが、ここが、私の中ですごくキてるポイントなんですよねぇ。

 それに、「こぼれる」の漢字表記は「溢れる」の他に「零れる」もあります。もちろん「零」も水関連の言葉です。「あふれる」は「溢れる」のみで、「零」を使うのは「こぼれる」だけの特権なんですよね。なぜなら「こぼれる」は少量だから。「零」という漢字自体には4つ意味があります。1つ目は「おちる、ふる、こぼれる」と言った「落下」を表すもの。2つ目は「おちぶれる」、3つ目は「小さい、少ない、わずか」といった体積の小ささを表すもの。4つ目は数字としての「ゼロ」。つまり、「零」は落ちる量の少ない「こぼれる」だから使える漢字というわけです!

 わざとなのかは分からないけど、ひらがな表記なのも、そういう草野さんの漢字遊び(今勝手に名付けました)から来ているのかなぁ、なんて…ね。

 

 草野さんが素でやっているのか、それとも意識してやっているのか、それは私には分からないですけど、

忙しけりゃ忘れてもいいから

気が向いたならまたここで会おう

この、似た印象を受ける言葉の羅列を効果的なところにしっかりと持ってくる辺りが私はすごく大好きなんですよね。

 似た印象というのは、「忙」と「忘」です。忄(りっしんべん)も、㣺(したごころ)も、「心」から成った部首です。もちろん「心」に関した意味を持ちます。…分かりますか…これ、「心」が「亡」くなってるんですよ、どちらとも。構成するパーツが同じだと、その文字から与えられる印象も同じ、もしくは近しくなると思うんです。

 ファッションでもイラストでもそうですが、同系色類似色でまとめると、その統一感から柔らかな印象になります。あまり主張しすぎないような…そんな感じですね。文学的な用語で言うならば「対句」、色彩的な用語で言うならば「補色」…異なるものを並べると大きく印象を持たせます。「対句」や「補色」は、自分を際立たせ、目立たせ、自分をアピール…強く印象を持たせたい時などに使います。「忘れてもいい」というのは、相手の印象に残ることから大きく離れています。忘れるんだから、離れているといより、むしろ反対。一種の遠慮みたいな、「二の次で良いよ、俺なんて」みたいな。だけど、わざわざ「忙しけりゃ」と条件を提示しているのだから、忙しくないのなら「忘れていい」わけではないんですよね、忙しくないなら忘れてほしくないんですよね、これ。同系の言葉の羅列と、「忘れていい」条件の提示を同時に行うことで、柔らかな、ささやかな、ちょっぴり弱気な、でもちょっとだけ欲望が垣間見える、そんな"主張"なんですよね。

 …Twitterではここの部分、「どちらも「心」が「亡くなる」である「忙」と「忘」が並んでるの非常に良すぎないか…」程度にしか呟けなかったので、私が思っていたこと、感じたこと、なぜそう感じたのかまでを全部書き連ねられるここは最高ですね。文才ある人ならまだしも、私がたった140字で書ける訳ないだろ…。ただ単に薄っぺらく「良いね!」だけじゃないんです…ちゃんと理由があるんですよ〜〜〜〜!!!!それを伝えたかった、本当に良かった〜〜楽しい〜〜最高〜〜!

 

 あとですね、

子供のリアリティ 大人のファンタジー

ここもね、対句になっていて非常に効果的ですよね〜。それに、「子供のリアリティ」も「大人のファンタジー」というここの修辞法…中島敦の『山月記』に出てくる一文「共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。」の「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」のような、…私が好きなタイプの撞着語法です。私は、中島敦作品では『李陵』と『文字禍』が好きなんですけど、『山月記』も大好きな作品です。高校の国語の教科書の採録作品なのでほとんどの方が読んでるとは思いますが…もう一度読んでみるなど…ぜひ!(布教) ⇨ 中島敦 山月記

 そんな、『山月記』の一節のように撞着語法と対句を兼ねて並べることで、一種類だけの修辞法だけでは得られない効果があると思います。とても印象的です。撞着語法と言っても、「負けるが勝ち」や「黒い光」ほど分かりやすく矛盾してる2語をくっつけてるって訳じゃないですけど、「子供のファンタジー」「大人のリアリティ」の方が、それぞれの言葉が持たせるイメージとしては違和感ないくっつき方ですよね。…その逆のくっつけ方をやっているわけです。撞着語法の良いところは人の興味をパッと引けるところにあるんですよね…例えば、こちらもスピッツと同じくらい有名ですが、「Mr.Children」ってバンド名も撞着語法ですよね。こんな感じに、撞着語法は、比喩などの修辞法と違い、聴き手や読み手が理解しやすくすることが目的ではなく(むしろ逆に分からなくなってるパターンの方が多い気が…笑)、人の興味を引かせたいところに持ってくる訳なんですけども、人間の脳みそって違和感があるところに反応してしまうんですよ。多分、撞着語法はそれを利用した修辞法(レトリック)なんですよね。

 この前(※結構前)、NHKの「歴史探偵」という番組でですね、長谷川等伯の回で、面白い脳の実験をしていたんですよ!人の顔の画像をあえて変形させた画像と何もしていない人の顔の画像を見比べて、その時の脳波を比較した際に、変形させた方だけ異常に反応しているんです!なんでも、その"違和感"に反応しているそうです。面白くないですか、これ…!、…まぁ、何が言いたいかっていうと、矛盾する複数の言葉を組み合わせることで生じる違和感から人の興味を引くんじゃないかなぁってことです。あくまでも私の仮説ですが…。

 

 歌詞が大分前に戻ってしまうんですけど、﨑ちゃんパートの、

木霊に育てられ 雷神にそそのかされ

なんですけども、ここも若干対句っぽいですよねぇ。撞着語法はないので、先ほどの「子供のファンタジー 大人のリアリティ」の「山月記対句(今勝手に名付けました)」ではないんですけども。"柔"と"鋭"って対比が良いですね。

 「木霊」は木の魂です。日本人にとって木はとても馴染み深いものであって、事実「山神信仰」が見られるように、古くから大切にされてきました。また、「木」が与える印象には「ぬくもり」といった温かさや柔らかさがあります。実際に温かさ(体温)を持ったものではないですが、熱伝導率が低いこともその印象を与える根拠の一つだと思います。

 そして、「木霊」に対しての「雷神」は、字の通り雷の神様です。「木霊」に比べると、断然「雷神」は尖ったイメージありませんか?おそらく、雷の、稲妻のあの形から多分その印象が定着していると思うんですけども…。「雷神」の対だと、やはり「風神」を思い浮かべがちですが、"柔"と"鋭"という対比を表すのならば「木霊」が一番良いのかなぁって思いました。

 この、「木霊」と「雷神」という「柔」と「鋭」の対比なんです!!ニコニコふわふわしてる﨑ちゃん。そんな﨑ちゃんが叩く最高にカッコい〜〜〜〜いドラム!!そのギャップと似た印象を私は持ちました!えへへ!可愛いよ!!かっこいいよ!!

 

 あと、テッちゃんパートの

暗闇に紛れて 冷たい旅路の果てに

壊れたギターを拾い 音楽に目覚めたオバケ

というところなんですけども、「暗闇」「冷たい」「壊れた」と"マイナス"の印象の言葉が続いた後の「目覚めた」。朝日が登るような、一気に光が広がるような印象を持つの分かりますか?夜明け、のような。良いですよね。トントントンと暗い系が続いた後に明るさを持ってくることで、そこが一気に華やかになるというか…一つの明るさに価値が生じます。ハイライトのような。ずっと、眩しい、直射日光でジリジリするグラウンドとか街中を思い浮かべて欲しいんですけど、その時に太陽に価値感じますか…今の季節だから余計に分かると思うんですけど、一瞬太陽消えてくれないかなとまで思いますよね笑。でも、例えば夜に山を登って、山頂に着いた時に地平線の向こうで輝く太陽を見つけたら、その光が下の自分たちが住む街を照らしていく様子を眺めたら…その太陽の光には価値を感じますよね。…それです。

 テッちゃん、ギターと出会う前に何があったんだい…いや、ギターと出会ってからがあまりにキラキラ眩しすぎたから暗く見えただけかな?

 

 個人的に、

良かれと思っても ことごとく裏目に出て

爆音で踊ってたら ツノが生えてきたオバケ

の、田村くんのパートがとても大好きなんですよね!いつもの「日本語的に」というより、1人だけ踊ってるってところが好きです!!…しかも、この微妙に褒めてないあたり…………塩ムネ……ご馳走様です笑

 

 

 

 今回はこのあたりでいかがでしょうか。私の、こんなただのオタク語りで、何か新しい発見なり楽しさなりを見つけて頂けたなら本望です。今回も楽しく草野さんが紡ぐ言葉たちの「ここが大好きポイント」をだらだら綴ったわけですけども…笑

 ついでに日本語の魅力にも気付いて頂けたら最高に嬉しいです!

 

 「この曲、日本語オタク的にどう思っているのか知りたい!」みたいなリクエストや簡単な感想でも長文の感想でも…あればコメントして頂くかお題箱にでもぶっこんで頂ければとっっっっても嬉しいです。

【お題箱】 http://odaibako.net/u/same_____29

 

 今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

 

 

 それではまたどこかで巡り会えたら。  さめを